『 すっぱい・あまい ― (2) ― 』

 

 

 

 

   ズ ザザザザ −−−−− ・・・・ !

 

自転車が ―  前にチビひとり、後ろにもうひとり を乗っけて

坂道を降りてきた。

 

「 前も後ろも! しっかり掴まってろよぉ〜〜 」

「 きゃあ〜〜〜〜〜(^^♪  さっいこ〜〜〜〜〜〜 」

「 ・・・ うっく ・・・ こ こわ いよぉ〜〜〜〜 」

「 ほらほら 口 閉じてろ。 揺れたら舌 噛むぞぉ 

「「 ・・・・ 」」

 

   キキキ −−−  ジャリ。

 

ヒト満載の自転車は 坂の下できっちりと止まった。

ジョーは 飛び降りると子供たちに声を掛ける。

「 到着〜〜〜  さあ 降りてくれ 二人とも。

 小学生を前後に二人 なんてマジ ヤバいんだから 

「 おと〜さん。  ほんとうに いけないです でしょ 」

すぴかが お母さんそっくりの口調で言う。

「 ・・・ あ〜〜 すいません。

 本当にいけないです。  さあさあ 降りて 」

「 へへへ   さいこ〜〜〜〜だったよん  おと〜さん♪ 」

すぴかは にまにましている。

「 また のっけて〜〜〜 

「 ・・・ もう いい。 僕 」

すばるは 本当に怖かったらしい。 

涙目を必死でかくしている。

 

       ふうん ・・・

       それぞれなんだなあ〜

 

       なんか 面白い☆

 

「 今日は帰りに買い物いっぱい だからね〜〜 

 あっと  その前に八百屋さんにゆくよ 」

「 やおやさん? いつもさいごにゆくじゃん 

 じゃがいも とか たまねぎ とか さ〜〜 」

「 買い物は最後にするけど ちょっと用事があるんだ 

 二人とも一緒に来てくれよ 

「 うん いいよ♪ おと〜さん♪ 」

すぴかは お父さんの手にぶら下がる。

「 ぼ 僕も〜〜 」

すばるは お父さんのダウン・ジャケットに捕まった。

「 ほいほい 重いよ〜〜  さ 行こうな。

 あ 二人ともリュック、背負って 」

「「 うん 」」

お父さんは左右にチビ達をくっつけ 悠々と歩いて行った。

 

「 こ〜〜んにちはあ〜〜〜  」」

「 らっしゃ〜い  やあ すぴかちゃん すばるクン。 

 お  今日はお父さんと一緒かい 」

「 あら〜〜 いらっしゃあい  すぴかちゃん すばるクン 

八百屋さんでは 大将とそのおかみさんも一緒に歓迎してくれた。

「 こんにちは  買い物はまた後できます、いろいろ買いたいんで・・・

 あのう この前、ウチのに聞いたのですが  」

「 お?  なんだい 」

ジョーは 八百屋の大将に 梅見したいので敷地に入らせてもらっていいですか?

と了解を求めた。

チビ達は実に熱心に お父さんと八百屋さんの会話を聞いている。

「 え 梅見? ああ ああ もちろんいいよ。 満開はもうちょっと先かな 」

「 あ そうなんですか  チビ達にはイタズラしないよう

 しっかり見張ってますから 」

「 いやあ〜 御宅のチビさん達 大歓迎さ

 イタズラ? この二人はそんなこと、しないよ。  なあ? 

大将は チビ達にもちゃんと話かけてくれた。

 

   こくこくこく。  双子はそろって首を縦に振り続ける。

 

「 そうですよ〜〜 ゆっくり梅の花 見ていってね 」

おかみさんも大にこにこだ。

「 ありがとうございます!  すご〜くいい香ですよねえ 

 下の道で すばるが気付いたんですよ〜

 なんか ・・・ 勿体ないな 」

「 ムカシはね アタシが嫁に来たころは もっとふわ〜〜〜っと

 広がってたんですよ 

「 そうだなぁ  ウチもコドモらが小さい頃 

 梅の下で 弁当、広げたっけなあ 」

「 いいですね〜〜〜  ウチも真似したいです。 

 たぶん日曜とか お邪魔したいんです ・・・ いいでしょうか 

「「 どうぞ〜〜〜  しっかり見てやって 」」

「 ありがとうございます〜  おうい すぴか すばる、

 梅見 するよ 」

「 わああ〜〜い   おじさん あのうめぼし、 なってる? 」

すぴかはこの前いただいた おばあちゃんの梅干し が忘れられない。

「 あはは 梅干しはねえ 梅の実を何回も干して紫蘇と漬け込むんだよ。

 この前の梅干しは もうず〜〜〜っと前にね

 ウチのばあちゃんが作ったんだ 」

「 おば〜ちゃんが?  ・・・ また つくる? 」

「 たくさん 実が採れるでしょうねえ お店では 扱わないのですか 」

「 あ〜 そうなだけど ね・・・ 

 ウチのばあちゃん、脚、悪くしちゃってさ〜〜

 梅の世話するの、ムズカシイんだよ  山ん中だしねえ 

「 ・・・ ああ 斜面ですものねえ。 」

「 ウン。 俺らも店、忙しくて手伝えんしね 

「 残念ですねえ ・・・ 

 あ すいません、おしゃべりして。  あの 帰りに引き取りますんで

 ジャガイモ と タマネギ お願いします 」

「 おと〜さん  にんじん も! あとね〜〜  きゃべつ! 」

すぴかが 口を挟む。

 「 え・・ すぴか お母さんのメモ、読んだのかい 

「 ウン。 おと〜さん ってば すぐ忘れるから ・・・

 覚えていきなさい っておか〜さんが 」

「 そっかあ  すぴか、ありがと!  」

「 でへへへへ ・・・ 」

「 ・・・ おと〜さん 

すばるが ジョーのダウン・ジャケットの裾をつんつん・・・

引っ張っている。

「 うん? なんだい、すばる  」

「 ・・・ やきいも もだよ 

「 ?? やきいも??? 」

「 ウン。  やきいも。 かってきて って おか〜さんが 」

「 すばる。 八百屋さんでは 焼き芋 は売ってないよ? 」

「 ・・・ でもぉ〜〜 おか〜さんが いってたよぅ〜〜 」

すばるは もう涙目になってきている。

「 う〜〜ん  焼き芋はどこで売ってるかなあ 

「 やきいも〜〜〜  やきいも ・・・ 」

「 ! あ わかったぁ〜〜  おと〜さん アレだよアレ。

 えっと・・・ さつまいも!!  

すぴかが 声を上げた。

「 ああ そうか!  ふふふ 確かに 焼き芋 だよなあ 

 わかったよ、すばる。  焼き芋の元、を買ってゆこう 

「 う うん ! 」

「 すぴか。 ありがと! 」

ジョーは とん・・・と娘の背中を押した。

「 ・・ でへへへ 」

「 それじゃ 八百藤さん  サツマイモ も追加してください。

 帰りに引き取ります〜〜  はい お代 」

「 まいど〜〜  ああ 代金は帰りでいいよ 

「 いや 払ってゆきますよ。 」

「 そうかい  毎度ありがとうさん!  ホントにさあ ・・・

 そうそう  かどっこ・ライト、 直してくれたんだって? 」

八百屋の大将は 店先の少し先に立つ街灯を指した。

「 あ ・・・ ええ あそこって暗いと危ないですよねえ

 国道に抜けるトコだし 」

「 そうなんだよねえ 減速しないでカーブ切ってくだろ、

擦ってゆくヤツが後を絶たなくてねえ ・・・

 いやあ 若旦那が直してくれてホント助かったよ〜〜 

「 ウチのチビ達の通り道ですし ・・・ もう商店街のみなさんには 

 ウチ中、お世話になりっぱなしで 」

「 いやいや  あれから全然壊れないもんな〜

 地元町会としては 感謝感謝だよ〜〜 」

「 そんなこと ・・・ あ なにか修理とかあったらまた声を

 かけてくださいね  ぼく そういうコト、趣味なんです

 あ〜 そうだ、資格、持ってますから大丈夫ですよ 」

「 ・・・ありがと。 たすかるよ〜〜 」

「 いえいえ  さあ すぴか〜 すばる〜〜〜

 買い物大作戦 行くよ〜〜 」

「 うわ〜〜い 」」

チビ達は すた・・・と父親の両側にスタンバイ。

 

「 それじゃ ・・・ 帰りに寄りますね〜〜 」

「 うん 待ってるよ 

 

かどっこ・らいと と地元で呼ばれている街灯は

ジョーが ドルフィン号の廃材で補強、LEDライトに替えた。

以来 ( 当然だけど ) 風雨や違法すり抜けにはビクともしないで

地元の人々の足元を照らしている。

そして ― これは後でわかったことなのだが ― ドライバー達にとって

鬼門となっていた。  

 

     アソコの街灯 ヤバすぎ〜〜

     擦ると車体の方が凹むぞ!   

 

これは 都市伝説 となった・・・

 

 

買い物ツアー 帰路はジョーもチビ達も ぱんぱんのリュックを

背負い坂道を上る。

ジョーの押す自転車は トイレット・ペーパーや 10キロの米袋や

洗剤や ごろごろキャベツ  なんかが満載だ。

 

「 えいほ えいほ〜〜  すばる しっかり〜〜 」

「 う うん ・・・ えいほ えいほ ・・・ 」

「 二人とも すごいなあ〜〜 」

「 おと〜さん  すぴかね〜 おにぎり たべたい〜〜 」

「 僕も 僕もぉ〜〜 」

「 そうだねえ  お母さんに美味しいの、握ってもらおうか 」

「「 うん !! 」」

「 じゃ 張り切ってゆくぞ〜〜〜 諸君 ゴールはもうすぐだ! 」

「「 りょ〜かい 」」

 

 えっほ えっほ ・・・  

 

ジョーは左右にチビ達を従え 軽々と ( そりゃ当たり前だけど )

荷物満載の自転車を 押して行った。

 

 

 

―  その日 晩ご飯の後

 

  カチャ カチャ カチン ・・・

 

ジョーは丁寧に食器を洗ってゆく。

「 それでさ  梅見、 決定だよ 」

「 まあ すてき!  お弁当、もって楽しみましょうね 」

「 うんうん  あ〜〜 弁当、リクエスト いいかな 」

「 はい どうぞ 」

「 えっと・・・ これはチビ達の意見でもありまして。

 おか〜さんのお握り でお願いします  」

「 りょ〜かい♪  中身のリクエストは ? 」

「 う〜〜ん  ぼくはシャケ と おかか。 

 すぴかは 絶対に梅干し で すばるは定番・鯛味噌 だろ 」

「 ふふふ み〜〜んな 定番 ね。

 あら ジョー ツナマヨ とかじゃなくていいの? 」

「 いい。 オレは昭和のお握りを愛するオトコなんだ 」

「 しょうわのおにぎり??? なあに それ 」

「 ・・・ 先祖伝来の味ってことさ。 

 フラン きみは? 中身 なにが好きなんだい 」

「 う〜〜ん わたしは全部好きだけど ・・・

 あ 天むす、唐揚げ天むす にし〜ようっとぉ♪ 」

「 あ あ  あ〜〜〜〜〜  ぼくも  天むす 〜〜 」

「 ああらあ 昭和のお握り なの? 天むす って 」

「 う ・・・ スミマセン、 天むす にしてください 

「 ふふふ 了解。 たっくさん作るわ〜〜 」

「 手伝うよ〜〜  おにぎり作りってなんか憧れ〜 」

「 お願いね〜〜   あと 卵焼とウィンナーと 」

「 煮物も! ニンジンとかゴボウとかサトイモとか・・・のアレ 」

「 いいけど・・・普段のメニュウでいいの 」

「 いい いい。 ウチのご飯は美味しいもん。

 皆で 野外で食べればもっと美味しいよ 」

「 そうね そうね  あのキレイな白い花を眺めてね〜〜 

「 そうそう  ・・・ あ 最初に皆で下草刈り しよう。

 梅林を整えておこうと思ってさ  」

「 そうよね〜〜  快く 入らせてくださる御礼よね 」

「 そうそう・・・ チビ達にも手伝わせて 」

「 草抜き ならできるしね 

「 うひゃあ〜〜〜 ああ もう楽しみ〜〜 

 あ てるてる坊主 作ろっと 」

「 ・・・ てるてる・・・ なに?? 」

「 てるてるぼうず。 あ 知らなかったっけ? 」

「 しらな〜〜い  なあに? 

「 あ〜〜 見た事 ないかあ・・・

 あのさ 明日晴れてくれ〜〜 って日にね 前の晩かなあ

 てるてる坊主、 作ってつるすんだ 」

「 なにをつるすの? 」

「 てるてる坊主・・・ ってこうやって作って ・・・ 」

ジョーは布巾とキッチン・ペーパーで 即席てるてる坊主を作った。

「 へえ・・・ 」

「 これにさ 顔 描いてね〜〜 

 てるてるぼ〜ず てるぼうず〜〜  あ〜したてんきにしておくれ〜

 って さ 歌いながら 軒先とかにつるすんだ。

「 ふうん ・・・ そうすると晴れるの? 」

「 ま 晴れるといいね ってことで 

「 ふうん  なんか非科学的で可愛いわね 」

「 へ・・・? 」

「 そういうの、好きよ〜  ねえねえ すぴかに聞いたんだけど

 あ〜したてんきにな〜〜れ って  靴を片っぽ蹴り飛ばしてね

 裏がえしに着地してたら 雨   なんですって? 

「 ・・・あいつゥ〜〜〜 チクったなあ〜〜〜

 二人の秘密にしようね って言ってたのに ・・・ 」

「 はい??? 」

「 え    あ〜〜 そういう 民間信仰 もある、と聞き及びましたが

 仔細は存じません。 」

「 そうなの?  すぴかってば 晴れ になるまで

 10回くらいスニーカー 飛ばしてたけど 」

「 ・・・ あとで厳重注意だな〜〜 」

「 え なに 」

「 いや。  天気は 天気予報を調べるのが一番だと 」

「 そうよね〜〜  ちょっとスマホで見てみましょうか 

 少し先だけど 〜〜 」

フランソワーズは 熱心にスマホを操作し始めた。

 

      あ ・・・ よかった〜〜

      靴の件は どうぞ忘れてくださ〜い

 

      ホント、なんにでも 興味深々なんだな〜〜

      ウチの奥さんは ・・・

 

      てるてる坊主 も忘れてもらおっと

 

ジョーは こそ・・・っと 布巾とキッチンペーパーの

< アレ > を解体した。

 

 

 ― さて 梅見を日曜に控えて。

 

フランソワーズはチビ達をつれて ( 荷物持ち要員 ) 

商店街を目指していた。

「 ふんふんふ〜〜〜ん♪  おはなみ〜〜〜♪

 おべんと おべんと うれし〜な〜〜 」

すぴかはご機嫌ちゃんで 買い物部隊の先頭を行く。

「 すぴかさ〜〜ん  楽しいのはと〜ってもよくわかるけど

 買い物バッグ 振り回さないでくださ〜いな〜  」

後ろからお母さんが呼びかける。

「 おべんと おべんと〜〜  はにゃ?

 なに〜〜 おか〜さ〜〜ん 」

「 荷物! 振り回さないで〜〜 」

「 あ?  おか〜さ〜ん  たまご はいってないよ〜〜 」

「 そうだけど〜〜 ブロッコリーがつぶれるわ〜〜 」

「 ふ〜ん ・・・わかったあ 」

すぴかは しぶしぶ、ぶんぶん振り回し を止めた。

「 おか〜さん  たまご 僕がもってるから 

母のすぐ横で すばるは両手で買い物バッグを大事そう〜に抱え

慎重な足取りだ。

「 はい たまごと牛乳、 しっかりお願いね 

 ・・・ 重いかなあ  持って行けるかな 」

「 へ へいきだよ!  僕 ちからもち なんだ〜 」

すばるはおでこに汗で髪をへばりつけつつ にぃ〜〜っと笑う。

「 そうなんだ〜〜 すごいなあ すばるクンは。

 すぴかさ〜〜ん スピード・ダウン お願いしまあす 」

「 わか〜〜ったよ〜〜う   ね おか〜さ〜〜ん

 オヤツにさあ〜〜〜  かんそう・いも やいて〜〜 」

「 あ 僕もぉ〜〜〜 かんそう・いも〜〜〜〜〜 」

「 りょうかい〜〜  さあ 皆 !

 頑張って坂道のぼって ― オヤツへ ご〜〜〜! 」

「「 オヤツ〜〜〜〜 」」

三人の足取りは イッキに速まり ― チビ達のほっぺはピンクになり

商店街を抜け アソコを曲がればウチの前の坂道〜〜 というところで。

 

     ・・・?   ん ・・・?

 

「  ―  あ ・・・ ?  待って 」

フランソワーズの足は ぴたりと止まった。

「 ? おか〜さん なに〜〜  」

「 なんか いる ?? 」

「 し〜〜〜〜  ちょっと静かにしててくれる? 」

「「 ・・・・・ 」」

 

    ス −−−−     003の視覚と聴覚をonにする。

 

坂道への角を曲がる前、あの梅林の山の手前で  < 聞こえた > のだ。

「 ! 誰かが 怪我してるわ  動けないみたい 」

「 え〜〜〜 どこぉ??? だれもいないよぉ〜〜 」

すぴかが きょろきょろ辺りを見回す。

「 ・・・ あ  う〜〜ん って いってる!

 あっちだよ あまいにおいの木 のほう! 」

すばるが 山地の方角を指さす。

彼は かなり耳がいい子で 遠くの音もよく聞くしなんでも耳コピができるのだ。

 

      わ。 すばる、すご〜い

 

      こ〜れは 003 としては負けられませんね

 

   サア −−−−   レンジと精度をアップする。

 

「 ! 山への途中の側溝だわ!  あ 八百屋さんのおばあちゃん!? 」

「 え〜〜〜〜 どこ〜〜〜 おば〜ちゃ〜〜〜ん 」

ぱ・・・っとすぴかが駆けだした。

俊足の彼女は あっと言う間に山道に入り脇の溝を探している。

 

      すごいなあ〜  すぴか・・・

      天然の 加速そ〜〜ち! なのね

 

      ・・・ ジョーよかすごい!

 

「 あ!!!  めっけた〜〜〜  おか〜〜さ〜〜〜ん

 すばる〜〜〜  おば〜ちゃん ころんでる〜〜〜〜 」

「 今 行くわ!  すぴか そこでじっとしてて! 」

八百屋のあばあちゃんは どうやら山への途中で転んで側溝にはまったらしい。

「 おか〜さん いこ! 」

「 うん。 すばるクン 」

フランソワ―ズは 息子の手を握り駆けだした。

 

「 おか〜さん ここ!  ここ! 」

すぴかが 側溝の脇でぶんぶん手を振っている。

「 ありがと すぴかさん !!  この荷物、見ててね〜

 あ!  やっぱり・・・ 」

買い物袋を放り出し 彼女は側溝の脇に屈みこんだ。

 

「 大丈夫ですか!??  今 助けますからね!!  

 すぴか。 八百屋さんにお知らせして! できるわね? 」

「 う うん ! 」 

すぴかは おそらく最高速度で転がるみたいに走ってゆく。

「 すばる。 おばあちゃまの荷物 持ち上げて! できる? 」

「 うん。  う〜〜〜んしょぉ〜〜〜 」

すばるは本当に案外力持ちで おばあちゃんの荷物と思しき

 布製の袋を引き上げた。

「 ありがと!  おばあちゃん?? わかりますか??

 わたし、岬の島村です〜 さあ ひっぱり上げますよ 」

フランソワーズは おばあちゃんの背中をしっかりと抱えた。

「 ・・・ あ  ああ ・・・ おくさん ・・・ 」

「 もちあげますよ〜〜  すばるも引っ張って〜〜 」

「 おか〜さん  い せ〜〜のせ! だよ〜〜 」

「 すばる〜〜 掛け声 おねがい! 」

「 う ウン・・・ い せ〜〜〜の〜〜〜せ!!!! 」

 

003としては 軽い仕事なのだが そこは <世間の眼> もあり

なにより小さなムスコも参加しているのだ。

フランソワーズとして いや 島村さんちのおか〜さん として

息子と協力して 〜〜 

 

    う〜〜〜ん しょ ・・・・ !   っと引き上げた。

 

「 さあ ・・・ 大丈夫ですか?? 怪我は? 」

「 ・・・ あ  ああ ・・・ あり がと ・・・ ぁ〜〜 

「 おば〜ちゃん おば〜ちゃん  ・・・ だいじょぶ??

 あ 僕のすいとうのおみず のんで〜〜〜 」

すばるが 水筒を差し出した。

「 すばる ありがと! さあ どうぞ 」

「 あ ああ ・・・ ん〜〜〜〜 おいし・・・ 」

おばあちゃんは 山道に座り込んで水筒から美味しそうに水を飲んだ。

 

    お〜〜〜い お〜い    わっせわっせ ・・・

 

八百屋さんの大将が すぴかに先導されて駆け上ってきた。

「 ばあちゃん?!   ああ 奥さん ・・・ すばるクンも 」

「 八百藤さ〜〜ん ここですよ〜〜 」

大将は 島村さんちの若奥さんとすばるクンの側に 

へたりこんでいるおばあちゃん を見つけほっとした顔になった。

「 転んで溝に落ちられたみたいで ・・・ 」

「 すいません〜〜 ああ ありがとうございます  

 ばあちゃん どこか怪我したか 」

「 ・・・ 脚が イタイ ・・・ 」

「 わかった。 さあ 俺におんぶしな 」

「 ありがとよ ・・・ 」

「 おばあちゃん? ほら せ〜の 」

「 あ アタシも〜〜  せ〜の 」

「 僕も 僕も〜〜 」

フランソワーズは チビ達と協力しておばあちゃんを

八百屋の大将の背中にのっけた。

「 ・・・ よっと・・・ わあ 奥さん ありがとうございます。

 すぴかちゃんもすばるクンも ・・・ ありがとう!

 俺 このままヤマダ医院に駆けこみますんで 」

「 はい どうぞお大事に・・・ あ おばあちゃんのバッグ

 お店に届けておきますね 」

「 あ〜〜  重ね重ねすまんですが〜 よろしく頼みますです

 さあ 行くよ ! 」

「 ・・・ ありがとうね〜  すぴかちゃん すばる君 奥さん 」

おばあちゃんは 弱っているけどチビ達をちゃんと見てくれた。

「「  おばあちゃ〜〜ん 」」

「 ほんじゃ!  ばあちゃん しっかり掴まっててくれ〜 」

「 ・・・ あいよ ・・・   」

八百屋さんは どどどど ーーーー  っと

山道を駆け下りていった。

 

      ぴゅう〜〜〜〜    夕方の風が吹き始めた。

 

「 ・・・さ。  八百屋さんに寄って帰ろうか 」

「 うん ・・・ なんかアタシ めちゃくちゃおなかすいた〜〜 」

「 僕もぉ〜〜〜 」

「 ああ お母さんも・・・ ね 乾燥芋、いっぱい焼こうね! 」

「「 わい〜〜(^^♪ 」」

山の途中から 島村さんちのお母さんと双子たちは 

ちょっとよれよれしつつも 元気に帰路についた。 

 

おばあちゃん は 島村さんち が梅見に来たい、と言ってるのを知り

梅林の雑草を抜いておこう として山の畑に行こうとしていたのだ。

幸い おばあちゃんの怪我は 打撲と擦り傷だけだった。

 

翌日 ― 

八百屋のおばあちゃんはオデコに傷テープを貼っていたけれど

元気でにこにこ・・・ 店先で待っていてくれた。

フランソワーズがチビ達と買い物にゆくと 大将も奥から飛び出してきた。

 

「 すぴかちゃん すばる君 ・・・ ありがとうね〜〜 」

「「 おば〜ちゃん だいじょうぶ ??  」」

「 奥さん〜〜〜 本当にありがとうございます〜〜 」

「 大怪我じゃなくてよかったですねえ・・・

 なんか ウチが梅見に行きたい って言ったばかりに ・・・ 」

「 いやいやいや あそこは ばあちゃんの散歩コースですよ

 この前までず〜〜っと歩いてたんですよ〜〜  なあ ?   」

「 ああ そうなんだよ。  脚を傷めてからなんか引きこもってて ・・

  ・・・ ばあちゃんが不注意だったのさ ありがとうよ・・・

 うん これからは ばあちゃん、脚を鍛えないとね・・・ 

「 これ ―  皆さん、好きですよね〜〜 どうぞ!

 店の売り物で御礼っちゃなんですけど 」

  

   どどん。  どさ〜〜。

 

八百屋さんのおかみさんは乾燥芋を山ほどお盆に乗せてきた。

「 わあああ〜〜〜〜〜〜 

「 あらあ〜〜  ・・・ あ そんな 御礼なんて 」

「 いえいえ 気付いてくださらなかったら大ごとになってました。

 本当に 本当にありがとうございました。 

 店のモノですみませんが  どうぞ〜〜 」

「 ばあちゃんからも お願いしますよ。 もらってくださいな 

 すぴかちゃんもすばるクンも これ・・・ 好きだろう? 」

「「 うん !!!!! 」」

「 さ ・・・ どうぞ。 この袋にいれて 」

「 うわあ うわあ〜〜  アタシ もってく! 」

「 僕もぉ〜〜  僕 ちからもち なんだよ〜  」

「 うんうん た〜〜〜くさん食べておくれ 

 奥さん 本当に本当にありがとうございました。 」

「 いえいえいえ  あ〜 嬉しいです〜〜

 このおいも、ウチ中大好きなんです、もちろんわたしも♪ 

 おばあちゃま  八百藤さん ご馳走様です 

「 日曜は ゆ〜〜〜っくり梅見してちょうだいね。

 じいちゃんが丹精していた梅林だからね〜 

 そろそろ満開ですよ ・・・  ほんにいい梅だから 」

おばあちゃんは まだ脚を引きずっていたけれど

にこにこ・・・ 元気な笑顔だ。

 

    よかったね〜  よかったわ〜〜

 

大根やらほうれん草を買って 三人は八百屋さんを出た。

 

  えっほ えっほ〜 おいも おいも〜〜〜〜♪

 

チビ達は 乾燥芋の袋を大事そう〜〜に交代で抱えている。

 

       ふふふ ・・・ 楽しそうね

 

       そうよね  二人とも頑張ったもんね

       おばあちゃんも元気になってたし

 

       ああ  よかった ・・・・

 

「 ん 〜〜〜〜  ああ ちょこっとだけ ・・・

 風が 温かくなったかも ねえ 

フランソワーズは 空に向かって大きく手をあげた。

 

   ぴゅう 〜〜〜〜   

 

まだまだ空気は冷たいけれど お日様がちょぴっとだけ

風を暖めているのかも しれない。

― 日曜日は きっといい梅見ができるだろう。

 

 

 

   ほわん  ほわん  ほわん 

 

白い花が重なり合い びっしりと枝について咲いている。

そんな枝が これまた重なり合い 競い合い伸びているのだ。

・・・ ちょっと伸び放題かもしれないけど ・・・

 

さて その日曜日 ―  島村さんち の一行は 梅の木の根元を傷めないように

すこし離れてレジャー・シートを広げた。

もちろん その前には一家総出で雑草抜きと枯葉の掃除をした!

 

Last updated : 10.25.2022.           back      /     index    /   next

 

************  途中ですが

えっと ・・・ 相変わらず のほほ〜〜〜んな 島村さんち です☆

まだ 続きます〜〜  (´・ω・`)   すいません ・・・・

あ 八百屋さんの屋号が  八百藤  さんなのです☆